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新日本フィルハーモニー交響楽団
”一緒に音楽をやろう”との小澤征爾の呼びかけに共晴した演奏家が中心となり、72年7月に自主運営のオーケストラとして発足した。同年9月には小澤の指揮で第1回定期演奏会を開いている。以来・意欲的な演奏活動で着実な発展を続け、88年には財団法人化を実現。94年7月には定期演奏会も第200回を超えている。
新日本フィルの指揮者は、当初、小澤征爾を首席指揮者に、山本直純を幹事、手塚幸紀、小泉和裕を指揮者、斎藤秀雄を顧問とする指揮者団が形成された。斎藤秀雄の没後は朝比奈隆を顧問に迎え、この陣容は92年に指揮者団が発展的解消をするまで続いた。音楽監督は第1代小泉和裕(75−79年)、第2代井上道義(83−88年)が務め、両指揮者のもと新日本フィルはオーケストラの基礎を固め、躍進した。91年秋には楽団創立20周年を機に、小澤征爾が名誉芸術監督に就任。また、92年9月にはシモン・ゴールトベルク(93年7月死去)、レオン・フライシャーが、94年10月には高関健が、それぞれ新日本フィル指揮者に就任、さらに95年9月には”フレンド・オヴ・セイジ”のタイトルでムスティスラフ・ロストロポーヴィチが指揮者陣に加わり、音楽面での一層の充実がはかられるようになった。
新日本フィルは、1997年に錦糸町駅前に竣工する「すみだトリフォニーホール」を本拠地とすることが決まっており、地域に基盤を置いたオーケストラとして、新たな文化活動の展開を目指している。墨田区内においては、墨田の夏の風物詩となった錦糸公園での野外の「サマーコンサート」、小・中学校の体育館で開く地域の人々を対象とした「コミュニティー・コンサート」、小学校の音楽の授業の教室に楽員が出向いて演奏をする「ミニ・コンサート」など様々な活動を始めている。

 

楽曲解説

歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲K527
「フィガロの結婚」は、他のどこよりもプラハで熱狂的な成功を収めたが、そのプラハのためにモーツァルトが新たに依頼されて書いたものが「ドン・ジョヴァンニ」である。しかしその性格は「フィガロ」と大変に違っている。恋の冒険家ドン・ファンの伝説に基づくダ・ポンテの台本をモーツァルトは、時には悲劇的緊張をもって、ときにはエロス的生命力をもって、またときにはほほえましいユーモアをもって音楽化することに成功した。モーツァルトの作品中でも、もっとも劇的迫力に富んだオペラである。序曲は、まずアンダンテ、二短調の不気味な序奏に始まる。この音楽は、石像がドン・ジョヴァンニ邸の夕食に踏み込む場面で演奏されるもの。やがてモルト・アレグロの主部に入ると暗い緊張はすっかり晴れ、躍動感のある、活発な音楽が操り広げられる。
初演1787年。

 

クラリネット協奏曲イ長調K622
この曲は、モーツァルト最後の協奏曲です。名手アントーン・シュタードラーのために作曲されたのですが、モーツァルトの生前に演奏されたがは定かではありません。18世紀に登場した新興の楽器クラリネットは、モーツァルトとシュタードラーの協力のもとに個性を見いだされ、性格を確立された楽器といっても過言ではありません。他の管楽器と比べたときのクラリネットの特色は、広い音域を持ち、高・中・低音域で音色が異なっており、人声にも匹散するニュアンスの豊かさを有することにあります。またこの協奏曲は、モーツァルトの甘く内面的な驚きと、晩年を特徴づける澄み切った音調の不思議なまでの解け合いを示しており、モーツァルトの作品を含めたあらゆる管楽器の協奏曲中の最高の作品となっています。そればかりか、全曲に官能性と精神性の一体となった高貴な表情をたたえたこの協奏曲は、もっともモーツァルト的な作品の一つということができるでしょう。

 

第1楽章 アレグロ
第2楽章 アダージョ
第3楽章 ロンド・アレグロ

 

交響曲第5番ハ短調「運命」
この曲は、ベートーヴェンの最円熟期になった画期的な傑作に属し、純粋な古典形式に立脚しながら、自由に個性の強い魂を語り、豪胆に悲愴と闘争と情勢を盛り上げた点で、第3番の「エロイカ」をしのぐ驚異的な作品です。

 

 

 

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